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HOME  > 研究成果  > 専攻NOW  > 第3回 岩崎博史教授

第3回 DNA組換え反応の全体像を研究する創製科学研究室の岩崎博史教授

生体超分子科学専攻に所属する皆さんにスポットを当ててインタビューし、専攻の今をリアルタイムでお伝えする「生体超分子専攻NOW」。

第3回目は先日、研究チームの論文「真核生物由来のリコンビナーゼによるホリディ構造の形成と交差部位移動反応(*1)」が、英国科学誌「Nature」(平成20年2月21日号(*2))に掲載された、岩崎博史教授にお話を伺いました。

研究内容について

英国科学誌「Nature」に掲載されたという記事は、本学ホームページでも既に取り上げられていました。(*3) これはどのようなご研究なのですか?

相同組換えという生命現象があります。このおかげで生物種に多様性があるわけです。と言われてもなんのこっちゃとなりますが、例えばヒトという生物種を観察してみましょう。みんなそれぞれ少しずつ違っていますね。ですが生物種としては、ヒト(ホモ・サピエンス)と言う一つの括りです。この”少しずつ異なっていること”ということが、生物種の多様性です。この、一つの生物種内で個体がそれぞれ微妙に異なっていること、すなわち多様性は、配偶子(精子と卵子)が形成されるときに、遺伝情報のシャッフリングが起こることで生まれてきます。この遺伝情報のシャッフリング、もしくはリアレンジメント(再編成)のことを、相同組換えといいます。

 相同組換え(遺伝情報の再編成)という生命現象の生体内化学反応は、もっとも単純化して言うと、相同(*4)なDNAの繋ぎ換えの化学反応です。
 一般に化学反応は、最初(インプット)と最後(アウトプット)があります。教科書では基質(substrate)と反応産物(product)と書かれています。生体内で起こっている化学反応は、酵素と呼ばれるタンパク質が基質を反応産物に変換する反応を触媒します。この反応の進行過程で、基質でもなく反応産物でもない、”中間体”が形成されたあと、最終的な産物ができます。これは、化学反応の基本です。

 相同組換えの反応に話を戻すと、DNAの繋ぎ換え反応の素反応は、相同なDNA間の鎖交換反応で、これをつかさどる酵素をリコンビナーゼといいます。リコンビナーゼは、バクテリアからヒトまで広く進化的に保存された酵素です。また、この反応における重要な中間体の一つは、ホリデイ構造(*5)と呼ばれる特殊なDNA構造です。

 今回の私たちの研究は、分裂酵母のリコンビナーゼを使って、世界で初めて実際にホリデイ構造を試験管内で作らせたというものです。さらにヒトのリコンビナーゼでも成功しました。つまり、理論上のDNA中間体構造が実験的に証明されたと言えば分かりやすいかも知れませんね。

こういった一つの研究が形になるまで、どのくらいの時間がかかるものなのですか?

難しい質問ですね。今回の場合、実験系が動くようになって論文投稿までは半年くらいですから、結構短かったですね。ただ、実験系が動くようになるまでの学生さんの目に見えない努力期間もあるので、正確には言えないです。そもそも発想は10年以上前に遡りますし。

この研究成果を今後どのようなことに応用できると思いますか?

こういう質問も結構困るんです。今回論文掲載が決まったとき、嬉しくて田舎のオヤジに電話しました。オヤジは小学校の先生を定年退職し、家でゴロゴロしている身分なのですが、「それで、その研究は何の役に立つんだ?」と尋ねてきました。「いや、基礎研究だから特にすぐに何かの役に立つってもんじゃない。」と答えると、「それじゃイケンガァ(私の田舎の方言で駄目だという意味)。」と切りかえされました。

 オヤジのような世間一般の人が、研究は直接的に世の中の役に立つものだと信じて止まない気持ちは分かりますが、真理の追究というだけでも良いんじゃないかと思っています。特に昨今、国を挙げて役に立つ研究を推奨していますが、私みたいなアマノジャクが一人くらいいてもコミュニティとしては健全だと思いますがいかがでしょう?

どのようなときに研究をしていて良かったと思いますか?

楽しかった、ものすごくエキサイトしたという意味では、自分が実際手を動かして実験していた頃の、現像されたオートラ(*6)のフィルムを見た瞬間、これにつきます。これ以上のものはありません。仕込んでから一晩から一週間かかって出てくる世界初のデータを、一番最初に見る喜びです。

 今は論文掲載のアクセプトが来たとき(*7)。これで学生さんが学位申請できると思うとほっとします。

大学院での教育について

大学院教育で、もっとも力を入れていることは、どのようなところですか?

科学的な議論ができるようにすることです。科学的な議論ができる、ということは正確な言葉で考え、正確な言葉で表現するということです。日常生活の会話の中では「99.9%似ているもの」を「同じもの」と表現してしまっても大きな問題になることは少ないと思います。ですが、科学の場では「99.9%似ているもの」はどんなに似ていても「違う」のです。これらは正確に表現しなくてはなりません。
 きちんと考え、正しい言葉で表現する、そのトレーニングであることを意識して学生さんに接するようにしています。

学生さんにはどのような心構えで研究に取り組んで欲しいですか?

自ら考えて主体的にやって欲しいですね。それと、変なプライドは捨てて素直に学ぶ気持ちを大事にして欲しいと思います。よく、できる人できない人っていますよね。できない人というのは人の言うことを聞かず自分流にやろうとするからできないんです。最初は知らなくて当たり前なんだから、知らないときは聞く。教えられたことはそのままやってみる。それができるようになって初めて自分なりにやってみるという風になっていくのです。素直に学ぶと言う意味はそういう意味です。

先生の研究室に入るにはどのような勉強をしておくと良いですか?

特にありません。強いて言うなら高校レベルの知識と、私たちがやっている研究テーマを面白いと思う気持ちがあれば良いです。私たちの研究のやり方は、解決すべき問題を明確化するところから始まります。そしてそれを解決するために、仮説を立てる→実験をする→結果を評価する、という流れで行います。結果が予想と合致すれば、次の新しい仮説を立てます。もし、結果が予想と違うのであれば、仮説が間違っていると判断します(もちろん、正しく実験が行われているというのが前提ですが)。その場合は、もう一度異なった視点から仮説を組み直します。解決すべき問題を明確化することが大事であり、仮説の構築が重要なポイントになるのです。新しい仮説が支持されるまで何度も仮説を組み直し、実験を繰り返すわけですから、研究テーマを面白いと思う気持ちが大切なんです。

研究室の雰囲気はどんな感じですか?

私自身はのんびりした研究室だと思っています。学生さん自身はどう思っているかは知りませんが。ただ、コミュニケーションをとるように意識しています。話しているうちに新しいアイディアが生まれてくることがありますので、コミュニケーションは大事だと思います。

先生について

先生はどんな学生でしたか?

学部学生の頃は人一倍遊びほうけていました。それはもう恥ずかしいくらいです。でも大学院時代はそれなりに頑張ったと思います。自らの手で実験したという意味で、大学院時代が今までの人生の中で一番実験しました。当然と言えば当然ですが。最後の方は仮説が面白いほど当たるので実験がすごく楽しかったのを覚えています。

いつ頃から研究者の道に進もうと思ったのですか?

小学校低学年ぐらいには、漠然とした希望があったように思います。しかし、高校卒業時に進路を決めるときには全くそう言う意識はありませんでした。自分が研究者になれるとは思いもしませんでしたから。

きっかけは何だったのですか?

大学卒業後は田舎で就職し、親と一緒に暮らすというのが暗黙の了解だったのですが、その時の指導教員の先生に後押しされて博士課程進学を決めました。私にとって博士課程に行くということは、もう後がない、後戻りはできないということだったので、一種の覚悟をもって決断しました。悲壮感は全くなかったですけど。
 今は博士号をとった後でも企業に就職する道がありますが、当時は博士課程に行ったら大学の先生として生き残るしか道がありませんでした。ですから博士課程進学を決めたこと=研究者になることだったといえるわけです。

趣味や最近はまっていることはありますか?

最近ちょっと太ってきたので体重やメタボリック症候群など、健康のことに注意が行くようになりました(笑)。趣味は何でしょう?本当はアウトドアスポーツ大好きなのですが、最近時間がとれなくて、残念ながら趣味らしきことは何もしていませんね。

最後に、鶴見キャンパスを目指す学生の皆さんに一言お願いします。

わかるってことは、結構楽しいってことを知って欲しいです。

今回は、創製科学研究室の岩崎博史教授にお話をいただきました。詳しい研究内容などの情報を知りたい方は、先生のホームページをご覧ください。岩崎先生、今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました!

Profile

岩崎 博史(いわさき ひろし)
大阪大学大学院医学研究科博士課程修了(1991年)。医学博士。大阪大学微生物病研究所助手(1991−2001年)を経て2001年4月より、横浜市立大学大学院総合理学研究科助教授。2005年より国際総合科学研究科准教授。2007年4月より国際総合科学研究科教授

Keywords

(*5)ホリデイ構造
ホリデイとは、提唱者である遺伝学者Robin Hollidayの名前に由来し、この構造は相同な2分子のDNAが絡みあった(分子遺伝学の教科書では、しばしば十字ないしX字様のDNAとして模式化されている。)ものです。

(*6)オートラ
オートラジオグラフィの略。レントゲン用のフィルムに放射性同位元素を含むサンプルを密着させ潜在像を現像する技術。

(*7)
博士の学位を取得するためには、学位論文が審査委員制度を設けている国際学術雑誌に第一著者として英文で掲載されていることが条件。

過去の専攻NOW

【第2回】 生体高分子の立体構造とそのはたらきを研究する構造科学研究室の清水敏之准教授

【第1回】 植物の環境応答を研究する環境生物学研究室の平山隆志准教授