ナビゲーションをスキップして本文へ
  • Japanese
  • English
  • 通常版
  • テキスト版
  • 資料請求
  • お問合せ
  • サイトマップ
  • 大学トップ

研究者検索


ここから本文

HOME  > 研究成果  > 専攻NOW  > 第8回 川路英哉准教授

第8回 コンピュータで大規模遺伝情報解析を行っているゲノム機能科学研究室の川路英哉准教授

生体超分子システム科学専攻に所属する皆さんにスポットを当ててインタビューし、専攻の今をリアルタイムでお伝えする「生体超分子システム科学専攻NOW」。

第8回目は今年度から客員教員として新たにお迎えしたゲノム機能科学研究室の川路英哉准教授にお話を伺いました。

研究内容について

先生(のチーム)の研究内容を「私にも分かるように」教えて下さい。研究対象は?どんな手法を用いて?将来はなんの役に立つ?

細胞の核の中に存在するゲノムDNA(デオキシリボ核酸)によって遺伝情報が世代を超えて(親から子へ)伝わることは良く知られていると思います。が、それだけでなく、細胞のダイナミックな活動はすべてその遺伝情報が機能を発揮することで維持されている、というのも生命を理解する上でとても重要な観点です。遺伝情報が細胞の中で働くためには、ゲノムDNAのほんの一部の情報をRNA(リボ核酸)(*1)という分子にコピーするのが第一ステップになるのですが、私のチームでは、ある遺伝情報がどのようにして特定されRNAへコピーされるのか、そしてそのRNAはどんな作用を及ぼすのか、細胞毎にどんな役割を担っているのか、ということに興味を持っています。これらのしくみは、一部の遺伝子についてよく理解されているのですが、全体像として理解するのは未だに難しい部分が多いのです。

そこで、細胞の中にあるRNAの網羅的な解析(トランスクリプトーム解析)(*2)を通じて、これらの謎に迫ろうと考えています。ほんの十数年前まで、RNAの主な役割は、ゲノムDNAに含まれている遺伝子の情報をタンパク質として伝えるもの、つまり補助的なものとして考えられていました。しかし最近の研究結果から、タンパク質に伝える情報を持たないようなRNAがとても多く存在すること、また、RNAのままでその機能を発揮するRNAも数多く存在すること(他の遺伝子を制御する、等)、が明らかになり、教科書が書き換えられつつあります。生命活動にとって最も基本的であるはずの部分に、まだまだ新しいことが見つかっている、というのが面白いところです。また、細胞によって活躍するRNAが変わるのですが、RNAの活躍がどのようにして制御されているのか(転写ネットワーク)(*3)を知るということは、細胞ひいては生命を理解する上でとても重要だと言えるでしょう。

DNAの塩基配列(ATGCの並び)(*4)を読み取るDNAシーケンサ(*5)という機械が広く使われているのですが、これをうまく利用することでRNAを読み取ることができます。様々な技術開発のおかげで、DNAシーケンサの能力が近年飛躍的に向上しました。最新の機械を使うと、一週間もあればヒトゲノム(30億個のATGCの並び)(*6)の十数倍もの塩基配列を一台の機械で読み取ることができるほどです。こんな膨大な結果を一つ一つ目で見るわけにもいきませんので、その解析はコンピュータを駆使して進めることになるのですが、私たちのチームでは特に、コンピュータを使ってこれらのDNAやRNAのデータ解析をする、ということを主にやっています。

この研究内容の面白いポイントは?また、研究者でよかったと思う、研究していて良かった、うれしかったと思うときは?

研究はどれも同じことが言えると思うのですが、まだ誰も見つけたことのないことを見つけたときはうれしいですね。

先生について

先生はもともと企業に在籍されていらっしゃったと伺っておりますが、企業の研究者と理研(大学)の研究者との違いは?

以前はNTTソフトウェア(株)のエンジニアとして実験をされる先生方のサポート等を行っていました。コンピュータを使って、実験結果を整理し解釈するという点では以前も今も同じことをしている、とも言えますね。決定的に違う点としてはやはり、自分の興味を持つ対象をより深く解析できるようになったこと、でしょうか。こんな実験をしたらどうだろう、こんな可能性は無いだろうか、と他の先生方と議論するのも楽しいですね。

川路先生は今年4月に連携大学院客員准教授として着任されました。先生として着任されて鶴見キャンパスの印象は?

企業に在籍していた頃から理研によく来ていましたし、その後理研で研究員として働いていましたので、ここに市大の大学院があるのはよく知っていました。が、きちんと中に入ったことは無かったのです。着任することになって初めて正面玄関から入ったとき、廊下の照明が少し暗いな、と感じたのを覚えています(笑)。省エネ対策ということで、いいことだと思いますが。

とても穏やかな優しい印象の川路先生ですが、先生が大学院生の時はどんな学生でしたか?

基本的には夜型人間でしたね。常に勉強・研究というよりも、音楽が好きで高校ではバンドを組みギターを担当したり、大学時代は放送サークルに所属し、ローカルFM番組などでDJをしていました。

いつ頃研究者になりたいと思いましたか?

博士前期課程を経て企業に就職したのですが、その時点まで生物学とはまったく緑がありませんでした。その後、仕事で生物学に接する機会があり、研究者になるのも面白いな、と思い始めたのです。博士の学位は、企業にいる間に取得させていただきました。コンピュータ科学出身の私ですが、生物学のジャンルに飛び込んで研究員として、また教員として働くことになったのは不思議な縁という気がしています。

海外での研究経験は?

今のところありませんが、機会があれば行きたいとは思います。ただ、今いる理研のオミックス基盤研究領域には、海外からきている研究者の割合が非常に高いので、英語という点からすると、毎日が海外みたいなものですね。

最近はまっていることは?

最近は忙しくて以前ほどではないですが、時間があればまた音楽を再開したいと思っています。

大学院での教育について

7月に先生の研究室に博士前期課程の学生さんが配属されました。学生さんには研究に対してどんな風に取り組んで欲しいと思って教育されていますか?

「学びたい」という受動的な姿勢よりはむしろ、どん欲に自分から情報にアクセスしていろいろなことに取り組んで欲しいですね。研究に限らず、自分にとって必要な情報というのは待っていてもやってきませんし、いろいろなこともやってみないと分からないわけですから。自分でデータや情報を集めて課題を見つけ、トライしてみようという自立心と能力を育んで欲しいと思います。データや情報を集めるという観点では、研究者にもコミュニケーション力が重要になりますので、学生のときに養っておきたいですね。今私がいる理研 オミックス基盤研究領域ではほぼすべての議論が英語なのですが、そこでも臆せず食らいついていって欲しいです。

最後に鶴見キャンパスに興味を持ってくださっている学生さん(大学生など)へメッセージをお願いします。

新しい世界に触れるには非常に良い場所だと思います。研究所(理研)という大学と全く異なる雰囲気の中で研究する機会が得られる、というのはとてもユニークなシステムです。研究所の施設というのも得難いリソースですが、やはりそこにいる研究者と一緒になって研究をすすめる機会がある、というのが一番面白いところだと思います。私が学生のときは、思いもしなかった環境です。最先端の科学に触れ、新しい環境に飛び込んでみたい人は是非来て下さい。そして自分自身で新たな一歩を踏み出して欲しいと思います。
また、私も教員として新しく一歩を踏み出した立場なのですが、変化の早い環境の中、現在の技術や研究が直面している問題や課題、それに対するアプローチ等、実際に現場で研究をやっていないと触れることができないような事が数多くあります。こういったことも踏まえて新しい次の一歩を踏み出すことができるよう、現場の知見をきちんと次の世代に受け継いでいきたいと思っています。

今回は、ゲノム機能科学研究室の川路英哉客員准教授にお話をいただきました。詳しい研究内容などの情報を知りたい方は、先生のホームページをご覧ください。川路先生、今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました!

Profile

川路 英哉(かわじ ひでや)
独立行政法人理化学研究所オミックス基盤研究領域、研究員。大阪大学基礎工学研究科情報数理系 博士後期課程修了(2003年)工学博士。NTTソフトウェア株式会社を経て、2007年 理化学研究所フロンティア研究システムRNA新機能研究プログラム研究員の後、2008年より現職。2009年4月より横浜市立大学大学院客員准教授。

Keywords

(*1) RNA(リボ核酸) 
塩基、糖、リン酸からなるヌクレオチドが直鎖状に重合した高分子である核酸の中で、糖の部分がデオキシリボースであるものをDNA (デオキシリボ核酸)、リボースであるものをRNA(リボ核酸)という。

(*2) トランスクリプトーム解析
細胞内で作られているRNAを網羅的に解析すること。解析としては、RNA塩基配列の同定ややその存在量の測定等を指すことが多く、これらによって働いている遺伝子や、その働きの度合いをしらみつぶしに調べることができる。

(*3) 転写ネットワーク
遺伝子が働くにあたって、そのDNA配列と相補的なRNAが合成される過程を転写と呼ぶ。この転写そのものが他の遺伝子の働きにより制御されていることから、遺伝子の制御関係は総体的にネットワーク構造として捉えることができ、これを転写ネットワークと呼ぶ。

(*4) DNA(RNA)の塩基配列
核酸に含まれる塩基の種類としては主にアデニン(A)・グアニン(G)・シトシン(C)・チミン(T)・ウラシル(U)の5種類あり、チミンは主にDNAの中にのみ、ウラシルはRNAの中にのみ存在する。これら塩基の並びをDNAの塩基配列、もしくはRNAの塩基配列という。

(*5) DNAシーケンサ
DNAの塩基配列を読み取る機械。

(*6) ヒトゲノム
ヒトの持つ遺伝情報の総体。ほとんどの遺伝情報は核内にあるDNA塩基配列として表現されていることから、ヒトの持つDNAの塩基配列すべてをヒトゲノムと呼ぶ場合がある。

過去の専攻NOW

【第7回】抗エイズウィルス活性を有するタンパク質の動作機構を解明した生体超分子計測科学研究室の片平正人教授

【第6回】病原菌のヘムセンサーの役割をタンパク質レベルで研究を行っている分子生理学研究室の中村寛夫准教授

【第5回】インフルエンザウイルスの増殖を担うRNAポリメラーゼサブユニット複合体の立体構造を解明した生体超分子設計科学研究室の朴三用准教授

【第4回】腸管免疫系の仕組みについて研究をしている免疫生物学研究室の大野博司教授

【第3回】DNA組換え反応の全体像を研究する創製科学研究室の岩崎博史教授

【第2回】 生体高分子の立体構造とそのはたらきを研究する構造科学研究室の清水敏之准教授

【第1回】 植物の環境応答を研究する環境生物学研究室の平山隆志准教授