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第1回若手育成講習会「コンピュータによる天然変性タンパク質(領域)の検索」が開催されました。


9月10日に横浜市立大学鶴見校舎で第1回若手育成講習会が開催されました。




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< 講習会の感想 >
第1回若手講習会開催報告
新学術領域「天然変性蛋白質」若手育成ワーキンググループ代表
九州大学 石野 良純

 新学術領域「天然変性蛋白質」では、新しい研究領域について世界最先端の研究活動を推進すると共に、この研究領域の将来を担っていく若手を育成することをもう一つの大きな課題として掲げています。そのための具体的な活動として、若手講習会をシリーズで開催して行く予定ですが、その第一回として、9月10日に横浜市立大学鶴見学舎におきまして、「コンピュータによる天然変性タンパク質(領域)の検索」と題する講習会を開催いたしました。本講習会には本学術領域内外の33名の研究者が全国から参加し、佐藤 衛領域代表(横浜市大)による基調講演の後、福地佐斗志博士(国立遺伝研)の講義、および指導のもと実際に天然変性タンパク質(領域)の検索実習を行いました。天然変性タンパク質(領域)を予測するプログラムの原理の説明から、実際に現在どのようなプログラムが公開されていて、それぞれにどのような特徴があるのかなど、バイオインフォーマティクスが専門でない研究者にも理解できる内容で、一日の短い時間でしたが大変充実した講習会となりました。参加者の協力で、アンケート調査を行った結果を以下に報告いたします。
アンケート回答率は42 % でしたが、その 86 %が45歳以下の若手研究者でした。また、64 %が分子生物学、36 %が構造生物学を専門とする研究者でした。ほとんどの参加者は、天然変性タンパク質(領域)の検索 について、全く知識がなかったか、検索プログラムの存在を知っていても、使ったことがないかまたは、独学で少々触った程度の経験を有する程度でした。受講者の感想を以下に簡単にまとめます。

良かった点
・実習を混ぜながらの講義は非常にわかりやすかった
・実習形式のため講習内容を理解しながら進めることができた
・受講者の人数がちょうど良かった
・初心者にもわかりやすくゆっくり進んだのでよかった
・演習があったので、検索プログラムの使い方を理解できた
・初心者でも非常に理解しやすい難易度であった
・理論もあるがそれを知らなくてもできるところが良い
・実習の例題があり分かりやすかった
・プログラムを使う上での必要な講義は十分な量だった
・実習の時間がじっくり取れてよかった
・内容が多すぎず、余裕をもって理解できた
・いろいろなデータベースの存在と特徴を知ることができた
・質問しやすい雰囲気があり非常によかった
・今回の講習会の範疇を超えて天然変性タンパク質の議論にまで盛り上がったことがよかった
・懇親会の場でも気軽に質問する事ができ、十分な時間が確保されていた
・マイクを使用しての質疑応答で、質問が全受講者に伝わりよかった

要望点
・具体的なIDPを幾つか出してほしかった
・もう少し講習の量を増やしてほしかった

 以上のように、ほぼ全員の受講者から、「十分満足」または「満足」という回答をいただきました。受講者の方々が本講習で勉強されたことを、今後の研究に十分役立てていただけるものと確信いたします。本講習の講師として、適切な講義と実習を提供してくださった福地佐斗志博士に感謝申し上げますと共に、基調講演を下さった佐藤衛領域代表、さらに講習会会場設定とその後のフリー質問会(懇親会)をお世話下さった、佐藤研究室の皆様に改めて御礼申し上げます。
本講習会は、本学術領域活動期間にシリーズで開催します。第2回は2011年3月に、構造解析をテーマに NMRによる天然変性タンパク質解析の講義と実習を予定しておりますので、ご期待下さい。詳細は決まり次第、改めてご案内申し上げます。

第1回若手育成講習会の講師をつとめて
国立遺伝学研究所 福地 佐斗志

 2010年9月10日、横浜市立大学において第一回若手育成講習会「コンピュータによる天然変性タンパク質(領域)の検索」を開催した。天然変性領域のコンピュータによる予測は、二次構造予測と同じような枠組みで扱うことが可能なため、多くの予測プログラムが開発されてきている。また、実験家が興味対象のタンパク質に取り組む際、ドメイン構成、変性領域を知ることは実験を計画するために大きな情報となるため、予測ツールを使いこなすことは実験家にとっても重要な課題となる。このような背景から、主な天然変性領域予測ツールを8個とりあげ、各プログラムの原理の概略、使用法等を紹介した。また、典型的天然変性タンパク質6個に関するこれらのプログラムの出力結果を比較し、各プログラムの出力傾向等を紹介した。いろいろなプログラムを比較検討する機会を得て、講師としても大変勉強になった。また、「若手」と銘打たれた講習会であったが、幅広い年齢層の受講者に刺激され、講習中また終了後の議論も大変に活況で、天然変性タンパク質がホットは話題であることを再認識できた。私自身にとっても、これらの議論は今後の研究に大きな刺激になるものであり、今後の研究に生かしてゆきたいと感じた。
IDP講習会のレポート
横浜市立大学 大学院 生命ナノシステム科学研究科M1  奥居 沙弥

 横浜で開かれた第1回若手育成講習会「コンピューターによる天然変性タンパク質(領域)の検索」に参加させて頂きました。本講習会では、天然変性タンパク質についての講義、実際にコンピューターを使用しながら検索方法を学びました。検索方法には全領域をウインドウ毎に変性か構造を見ていく「機械学習以外の方法」と問題のサイトのウインドウの特徴値を計算し、特徴値から正解のモデルを作る「機械学習」による方法の2つがありました。いくつかのプログラムを使用しながらサービス内容や特長、問題点について見ていきました。各プログラムにより短い塩基ずつしか読めないものや結果に変性領域と出すことが多いものなど、様々な傾向があり、自分が使うタンパク質によってプログラムの選択や組み合わせることが必要な様に見えました。
 私は天然変性タンパク質の検索や予測というプログラムがあることも知らずに、今回の講習会に参加させていただいて本当に勉強になりました。天然変性タンパク質領域はいまだ明確な定義も難しく、情報が少ないと思っていました。しかし、多くのデーターベースがあることを知り、今後タンパク質の比較や研究の計画をしていくうえで役立てていきたいと思いました。機会があればまた是非第2回講習会にも参加したいと思います。
新学術領域「IDP」若手育成プログラム第1回講習会に参加して
理研ASI/横浜市大生体超分子システム科学 柴田 武彦

 新学術領域「IDP」の若手育成プログラムの第1回講習会として、「コンピュータによる天然変性タンパク質(領域)の検索」が、9月10日にほゞまる一日をかけて、横浜市立大学鶴見校舎、学生コンピュータ実習室で開かれた。「若手育成」と銘打っているので参加申し込みするのに躊躇を覚えたが、思い切って参加してみた。若手のレポートではないが、一言書いてみた。天然変性(intrinsically disordered protein)の定義がどこまでできているのか極めて疑問であったのが、どうしても参加してみたかった理由である。「天然変性タンパク質(領域)の検索」というからには、現在確定している事柄が当然予測するための論理背景の中に含まれているから、それを知ればより理解が深まると考えたからである。「the coupled folding and binding process」との関係もどこまで天然変性と結び付けられるのかも分るのではないかと期待した。
 実際にコンピュータに触れながら行われた講習会は、特に、講師の福地佐斗志(遺伝研)氏の話が極めて明快で、予測方法の原理から、実際のプログラムの操作まで手際よくまとめられていた。そのテキストを片手にコンピュータで、研究対象にしている天然変性領域を持つ蛋白質について、いろいろな原理で作られたプログラムを実際に操作してみたことで、理解した気にさせるに充分であった。
 講習会に参加して、話を聞きながら、既に構造を持つ部分の三次元構造が解かれている天然変性領域をもつタンパク質のデータを、講習会で紹介されたいくつかの予測ソフトに載せて分ったことがある。全体的は、天然変性領域と予測された領域は既に、別の機会に予測してもらった結果と同じではあったが、部分を子細に比べると結構違いがあった。これは、多くの予測ソフトが使っている原理が主に機械学習であることを知ったが、それと関係がありそうだ。機械学習以外の方法の紹介もあったが、構造を決める因子から演繹する部分がもう少しは有るのではないかと思っていた。しかし、ある意味では、天然変性領域を成立させる要因とその機能についての理解が、現在、重要な研究課題であることを改めて実感する機会でもあった。改めに、この講習会の世話人と講師、特に福地佐斗志博士に感謝します。



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