平成23年6月29−7月1日に、宮崎市パームビーチホテルで「天然変性タンパク質の分子認識と機能発現」の第2回領域会議が開かれました。総括班、公募班、班友から40の研究発表があり活発な議論が繰り広げられました。以下に、会議のプログラムを掲載しますが、発表題目をクリックすると、発表内容(各発表1〜2ページ)がご覧になれます。また、参加者から感想文を寄稿していただきましたので、あわせてご覧下さい。
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|1日目 | 2日目 | 3日目 | 会議の感想 |
〈 1日目 6月29日(水) 〉
14:00-14:10 | 領域代表挨拶 佐藤 衛 |
◆ セッション1
座長 伊倉 貞吉
14:10-14:30 | 1 柴田 武彦 | (独)理化学研究所・基幹研究所・遺伝制御科学特別研究ユニット |
「組換え酵素における天然変性領域の機能」 | ||
14:30-14:50 | 2 草野 好司 | 京都工芸繊維大学・遺伝資源キュレーター教育研究センター |
「天然変性領域を包含する組換え酵素DNA ヘリカーゼとRad52 の機能解析」 | ||
14:50-15:10 | 3 石野 良純 | 九州大学大学院・農学研究院生命機能科学部門 |
「DNA 複製フォーク進行と関連タンパク質の天然変性領域の関わり |
座長 相澤 康則
15:10-15:30 | 4 奥脇 暢 | 筑波大学・大学院人間総合科学研究科 |
「Nucleophosmin/Nucleoplasminファミリータンパク質の構造と機能」 | ||
15:30-15:50 | 5 清水 光弘 | 明星大学・理工学部総合理工学科 |
「クロマチン関連転写制御因子の天然変性領域の機能解析」 | ||
15:50-16:10 | 6 堀越 正美 | 東京大学・分子細胞生物学研究所 |
「化学修飾ネットワークの構造的基盤としての不規則領域の生理学的意義の解明」 |
休憩(20分)
◆ セッション2
座長 古久保 哲朗
16:30-16:50 | 7 伊倉 貞吉 | 東京医科歯科大学・大学院疾患生命科学研究部 |
「Pin1との相互作用に伴うタウタンパク質の構造転移の研究」 | ||
16:50-17:10 | 8 相澤 康則 | 東京工業大学・バイオ研究基盤支援総合センター |
「ドメイン構造をもたない天然変性タンパク質群に対する構造機能相関解析」 | ||
17:10-17:30 | 9 松浦 能行 | 名古屋大学・大学院理学研究科 |
「細胞骨格関連遺伝子群転写調節因子MAL がアクチン動態のセンサーとして機能する機構」 |
座長 鳥越 秀峰
17:30-17:50 | 10 有田 恭平 | 京都大学・大学院工学研究科 |
「UHRF1タンパク質のリン酸化制御による構造機能変換機構の解明(UHRF1の天然変性領域の機能と構造)」 | ||
17:50-18:10 | 11 小迫 英尊 | 徳島大学・疾患酵素学研究センター |
「シグナル伝達キナーゼによるリン酸化を介したFG ヌクレオポリンの機能制御機構の解明」 | ||
18:10-18:30 | 12 湯澤 聰 | 九州大学・大学院医学研究院生化学分野 |
「細胞分裂に関連するタンパク質NuMAの動的構造解析と制御機構」 |
夕食 (18:40-20:00) 1F 龍王
◆ セッション3
座長 湯澤 聰
20:00-20:20 | 13 古久保 哲朗 | 横浜市立大学・大学院生命ナノシステム科学研究科 |
「基本転写因子TFIID の機能発現における天然変性領域の役割」 | ||
20:20-20:40 | 14 鳥越 秀峰 | 東京理科大学・理学部第一応用化学科 |
「天然変性蛋白質Stm1 の3 本鎖DNA 認識機構解析」 | ||
20:40-21:00 | 15 及川 大輔 | 群馬大学・先端科学研究指導者育成ユニット |
「天然変性タンパク質による小胞体異常タンパク質の感知」 | ||
21:00-21:20 | 16 小野寺 理 | 新潟大学・脳研究所 |
「TDP-43 天然変性領域の選択的スプライシングによる自己発現調節機構」 |
交流会1 (21:30-24:00)
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〈 2日目 6月30日(木) 〉
◆ セッション4
座長 新井 亮一
8:30- 8:50 | 17 佐甲 靖志 | (独)理化学研究所・細胞情報研究室 |
「天然変性構造を持つEGF受容体分子認識ドメインの1分子構造ダイナミクス解析」 | ||
8:50- 9:10 | 18 肥後 順一 | 大阪大学・蛋白質研究所 |
「Coupled folding and bindingの自由エネルギー地形」 | ||
9:10- 9:30 | 19 松下 勝義 | 大阪大学・サイバーメディアセンター |
競合効果に由来する天然変性の可能性」 | ||
9:30- 9:50 | 20 高野 光則 | 早稲田大学・先進理工学研究科 |
「天然変性タンパク質の分子認識における静電相互作用の寄与」 | ||
9:50-10:10 | 21 太田 元規 | 名古屋大学・大学院情報科学研究科 |
"「タンパク質天然変性状態の情報基盤の確立と展開 1.立体構造情報に基づく天然変性タンパク質研究」" |
休憩(20分)
◆ セッション5
座長 高野 光則
10:30-10:50 | 22 福地 佐斗志 | 前橋工科大学・工学部生命情報学科 |
10:50-11:10 | 23 廣明 秀一 | 名古屋大学・大学院理学研究科・構造生物学研究センター |
11:10-11:30 | 24 新井 亮一 | 信州大学・ファイバーナノテク国際若手研究者育成拠点 |
"「パターンデザインペプチドライブラリーを用いた天然変性タンパク質の特性解析」" | ||
11:30-11:50 | 25 皿井 明倫 | 九州工業大学・情報工学研究院 |
「天然変性蛋白質の進化、熱力学特性、機能の相関解析」 | ||
11:50-12:10 | 26 石田 恒 | (独)日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門 |
「MutSのDNA修復誘導変性ループと損傷DNA認識の関連性解析」 |
昼食(12:20-13:50) 1F 龍王 (総括班会議 1F 龍王)
◆ セッション6
座長 鎌形 清人
13:50-14:10 | 27 佐藤 衛 | 横浜市立大学・大学院生命ナノシステム科学研究科 |
苙口 友隆 |
慶應義塾大学・理工学部物理学科 | |
14:10-14:30 | 28 古寺 哲幸 | 金沢大学・理工研究域・バイオAFM先端研究センター |
「高速AFMによる天然変性タンパク質の直接観察」 | ||
14:30-14:50 | 29 明石 知子 | 横浜市立大学・大学院生命ナノシステム科学研究科 |
「天然変性タンパク質の動的構造解析-質量分析による解析-」 | ||
14:50-15:10 | 30 菅瀬 謙治 | 公益法人サントリー生命科学財団 生物有機科学研究所 |
「NMR緩和解析による天然変性蛋白質の動的構造解析」 |
自由討論 (15:20-18:00)
懇親会 (18:00-20:00)
交流会2(20:00-24:00)
〈 3日目 7月1日(金) 〉
◆ セッション7
座長 中川 洋
8:30- 8:50 | 31 西村 善文 | 横浜市立大学・大学院生命ナノシステム科学研究科 |
「核内天然変性タンパク質のNMRによる構造解析」 | ||
8:50- 9:10 | 32 水口 峰之 | 富山大学・大学院医学薬学研究部 |
「Expressed Protein Ligation による天然変性蛋白質の構造解析」 | ||
9:10- 9:30 | 33 鎌形 清人 | 東北大学・多元物質科学研究所 |
「変性タンパク質の動的多様構造の新規解析法の開発」 | ||
9:30- 9:50 | 34 関 安孝 | 岩手医科大学・薬学部構造生物薬学講座 |
「溶液X 線散乱とNMR 残余双極子結合を用いた解けた状態のタンパク質の構造特性解析」 | ||
9:50-10:10 | 35 桑田 一夫 | 岐阜大学・大学院連合創薬医療情報研究科 |
「プリオン分子内におけるポリA とポリT との稀な出会い」 |
休憩(20分)
◆ セッション8
座長 関 安孝
10:30-10:50 | 36 藤原 敏道 | 大阪大学・蛋白質研究所 |
「変性構造転移による膜蛋白質シグナル伝達機構の固体NMRによる解明」 | ||
10:50-11:10 | 37 河田 康志 | 鳥取大学・大学院工学研究科 |
"「天然変性蛋白質モデルである完全変性GroES のアミロイド線維形成機構のNMR 解明」" | ||
11:10-11:30 | 38 中川 洋 | (独)日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門 |
「天然変性タンパク質の折り畳みに伴う水和状態と構造揺らぎの変化」 | ||
11:30-11:50 | 39 深川 竜郎 | 国立遺伝学研究所・分子遺伝研究部門 |
「DNA 結合活性を有するCENP-T/W 複合体のセントロメア認識機構」 | ||
11:50-12:10 | 40 杉山 正明 | 京都大学原子炉実験所・粒子線基礎部制研究部門 |
"「重水素化試料を用いて中性子小角散乱で見るタンパク質の会合様態 SANS Observation of Structure of Protein Aggregation with Deuterated Samples」" |
昼食(12:20-13:30) B1 ブーゲンビリア
解散
合計 40演題
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〈 会議の感想 〉
第2回領域会議に参加して
6月29日-7月1日にかけて、宮崎で行われた第二回領域会議に参加しました。最終日以外は天候に恵まれ、また、ビーチの近くのホテルで会議が行われたこともあり、清々しい気分で会議に臨めました。昨年の第一回の会議では「IDPとは何か?」という共通の認識を議論する会であったと記憶していますが、今回は、実験・理論双方からIDPのデータが積み重なり、徐々にではありますがIDPの特長が明らかになってきたと感じました。会議を振り返ってみると、佐藤先生の「現時点でIDPの定義をするには早すぎるので、様々なケースを調べることによって、初めてIDPを定義できる。」というコメントに改めて納得させられました。さらに、柴田先生や佐藤先生をはじめ、誰とでも気軽に話せる環境があり、アットホームな雰囲気の中IDPについて議論することができました。最後に、宮崎という素晴らしい環境と議論しやすい雰囲気を作ってくださった、石野先生方に感謝いたします。
東北大学 多元物質科学研究所 鎌形 清人
さて、第1回領域会議では各自のこれまでの研究概要と今後の方向性が議論されたのに対し、今回の会議ではここ1年余りの間に進展したデータの説明が中心となり、最先端の研究のスピード感に大きな刺激を受けました。天然変性タンパク質の理解に向けた、分子生物学・情報生物学・構造生物学という異分野の交流の場として素晴らしい機会になったと思います。タンパク質のリン酸化を専門とする私にとって、リン酸化部位の大部分が天然変性領域にあるという最近の知見も踏まえると、今後の研究のヒントとなる発表が数多くありました。一つ残念だったことは、13分と短めの発表時間に苦労している方々が多く、イントロダクションや新たなデータの説明をもっと詳しく聞きたかったことです。2日目のバスツアーでは由緒ある鵜戸神宮を訪れ、願い事が叶うという亀石の穴への運玉入れを試すことができました。結果は失敗に終わりましたが、神様に頼らずに地道に研究成果を上げていきたいと考えています。
徳島大学 疾患酵素学研究センター 小迫 英尊
新学術領域「天然変性蛋白質」第2回領域会議に参加して
平成23年6月29日から7月1日に宮崎県宮崎市青島パームビーチホテルにて、第2回領域会議が開かれました。会場のホテルは海岸と青島を望み、天候にも恵まれ、きれいな環境でした。演題は合計40ありました。複数の専門分野の先生方が「天然変性」をキーワードに最先端の研究内容を発表されていました。どの研究も興味深い内容でした。なかでも個人的には、堀越先生の化学修飾ネットワークによる生命機能の解明および理解、小寺先生の高速AFMによる一分子の動的なイメージング、関先生の変性状態のNMR残余双極子結合とそのデータを再現する構造生成アルゴリズムの開発、河田先生のアミロイド繊維形成における中間体の存在にとても興味を引かれました。先生方の研究スタンスもかいま見ることができて、自身の研究意欲をかき立てられました。一日目と二日目の講演の後には懇親会が開かれ、講演では質問できなかったことをお話しできる機会がありました。深夜まで研究談義に花が咲き、ホテルの温泉に入れなくなるほどでした。二日目の夕方にはバスツアーが開かれ、日南海岸の超自然的なスポット(鵜戸神宮)をまわりました。神秘的な岩の造形に心をうたれました。鵜戸神宮のなかには、「運玉」と呼ばれる素焼きの玉を海からでた岩のくぼみに投げ入れることができれば、願い事がかなうそうです。残念ながら私は入れることができませんでしたが、成功されている方もいらっしゃいました。バスツアーやホテルへの送迎などをご用意してくださった、世話役の石野先生ならびにスタッフの方々にまことに感謝いたします。とても有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。
早稲田大学 先進理工学部研究科 梅澤 公二
第2回領域会議に参加して
6月29日から三日間にわたり第二回領域会議が宮崎県の青島パームビーチホテルで開催されました。会場の目の前に広がる雄大な太平洋は長旅の疲れを忘れさせ、最高の気分で会議に臨むことができました。会議では、班員ほぼ全員による未発表データを含む最新の研究内容について報告が行われました。天然変性タンパク質は単一の構造を形成するタンパク質に比べ、構造物性や機能メカニズムが複雑であり、これらを解明するには異なる実験手法および理論を組み合わせて総合的に理解することが重要であると改めて感じました。まさに新学術領域研究として臨むべきテーマであると思いました。構造研究に偏っている私にとって、分子生物学、情報生物学の研究者との意見交換は大変貴重な経験となりました。また懇親会においては、学生から教授まで別け隔てなく会話ができ、非常に楽しく交流できました。佐藤衛先生(横市大)がX線レーザーを用いた一分子小角散乱法についての熱弁に対して、河田康志先生(鳥取大)と共に反論を何度も繰り返したことが特に印象に残りました。なんてすばらしい組織でしょう。最後にこのような領域会議を開催し運営して頂いた関係者の皆様に感謝いたします。
サントリー生物有機科学研究所 小沼 剛