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Biophysical society 58th annual meetingのご報告。


58th Biophysical Society Annual Meetingに参加して

2014年2月15日(土)から19日(火)までの5日間、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコにて第58回Biophysical Society Annual Meetingが開催されました。その学会での様子と天然変性蛋白質に関する話題をレポートさせていただきます。
 あいにく日本からの出発は大雪のなかで先行きが不安でしたが、15日成田空港発では無事にサンフランシスコ国際空港に到着しました。学会会場へはサンフランシスコ国際空港から電車(Bay Area Rapid Transit)を使って約30分のPowell st.で降りて、10分ほど歩いて着きました。学会会場のMoscone centerは北と南の建物があり、地下道でつながっています。学会参加者らは北と南それぞれで行なわれる講演を聞くため、地下道を行ったり来たりしました。ポスター会場は北の建物で行なわれ、学会初日を除いて毎日1000件近いポスター発表が行なわれました。また、今回はポスター発表者に無料でカード(タイトル、著者、アブストが書かれたもの)が配布され、自身のポスターを紹介する名刺代わりとして重宝しました。
 学会初日(15日)はSubgroup meetingが開かれました。天然変性蛋白質のSubgroupはJianhan ChenとBen SchulerがChairとして開かれ、ポスドクAwardと講演が10件ありました。発表時間はKeynote発表が45分間、その他は25分間でした。Keynote発表は多めの時間が設けられており、じっくりと研究内容や背景を聞くことができました。また、Coffee Breakの時間も設けられており、そこかしこで話し合いが行なわれておりました。発表者とタイトルは下記の通りです。
Jane Clarke, Folding Upon Binding – Is it Just a Simple Protein Folding Problem?
Robert Best, Insights into the Binding Mechanism of IDPs from Molecular Simulation
Andrea Soranno, Single-Molecule Spectroscopy Reveals Polymer Effects of Disordered Proteins in Crowded Environment
Jean Baum, Accessible Conformations of N-terminal Acetylated Alpha-synuclein: Implications for Fibril Formation
Michael Woodside, Diverse Transient Structures in Small Oligomers of Alpha-synuclein Probed by Single-molecule Force Spectroscopy
Richard Kriwacki, Control of Disorder and Order in Signaling by Proteins
Martin Blackledge, NMR Studies of the Free Energy Landscape of Intrinsically Disordered Proteins in their Free and Bound Forms
Tzachi Hagai, Extensive Use of Host-Mimicking Motifs Supports Complex Regulation of Viral Proteins
Mark Bowen, Linking Intrinsic Disorder to Allosteric Regulation in the NMDA Receptor
Rohit Pappu, Decoding Sequence-ensemble Relationships of IDPs
 始めのJane ClarkeはKeynote speakerとして、結合と共役した折れ畳みについてInduced fitかPopulation shiftかなど結合様式について言及しておりました。そして、天然変性蛋白質は結合相手との解離定数がOrdered蛋白質よりも大きく、天然変性蛋白質は結合が弱いことを話されていました。さらに、彼女らのグループで研究されたcMyb:KIX複合体やPUMA:Mcl-1複合体に関するお話がありました。その中で、印象深かったのは解離定数が大きい複合体は解離速度定数が大きく、結合速度定数は差がなかったということです。また、Subgroup Meetingの全体的な感想としては天然変性蛋白質が天然変性である理由と細胞内での役割に関連した内容に興味が湧き、天然変性が機能を果たす上での意味を考えさせられました。
 学会4日目(18日)には、天然変性蛋白質のPlatformが開催されました。Platformでは、発表1件あたり15分間(およそ10分間講演と5分間質疑応答)でした。発表者とタイトルは下記の通りです。
Ruchi Lohia, PREDICTION OF THE EFFECTS OF THE VAL66MET POLYMORPHISM ON THE CONFORMATIONAL ENSEMBLE OF AN INTRINSICALLY DISORDERED PROTEIN, BRAIN-DERIVED NEUROTROPHIC FACTOR
Anuradha Mittal, HOW DO INTERACTIONS IN CIS WITH ORDERED DOMAINS INFLUENCE SEQUENCE-ENSEMBLE RELATIONSHIPS OF INTRINSICALLY DISORDERED REGIONS?
Yuan Yang, THE C-TERMINAL V5 DOMAIN OF PROTEIN KINASE C IS A MULTI-FUNCTIONAL INTRINSICALLY DISORDERED PROTEIN MODULE
Birthe B. Kragelund, C-TERMINAL ERK D- (AND F-LIKE) DOMAINS LINK THE NA+/H+ EXCHANGER NHE1 TO ERK2 PHOSPHORYLATION AND REGULATION VIA SCAFFOLDING
Sarah L. Shammas, SPEED DATING WITH KIX: A SINGLE DOMAIN THAT HAS MANY PARTNERS
W. Wendell Smith, MOLECULAR SIMULATIONS OF THE DYNAMICS OF DISORDERED PROTEINS
Steffen P. Graether, THE PROTECTION OF MEMBRANES FROM COLD-STRESS: A STRUCTURAL STUDY OF THE INTRINSICALLY DISORDERED DEHYDRIN BOUND TO MICELLES AND LIPOSOMES
Trevor P. Creamer, TRANSIENT DISORDER: CALCINEURIN AS AN EXAMPLE
 また、学会4日目には2013年ノーベル化学賞受賞者Arieh Warshelの講演がありました。ゆっくりとした口調で、これまでご自身が取り組んできた計算化学の研究についておもしろいアニメーションを交えてお話しされていました。
 ポスター発表は、最終日は午前に、その他の日は午後一番に開催されました。奇数番と偶数番で各1時間ずつ行なわれました。ポスター発表会場は広く、1000件近いポスターが一堂に会しました。ポスターの間隔も広く設置されており、多くの参加者でにぎわっていても移動はしやすかったです。ポスターの並び順はカテゴリごとに決められており、天然変性蛋白質のカテゴリではα-synucleinやTauなどの天然変性蛋白質の立体構造集団に関する発表がありました。また、別のカテゴリでも天然変性に関連する発表が多く見受けられました(Calmodulinと相手蛋白質の結合速度に関する研究発表や分子モータ蛋白質の天然変性領域に関する研究発表など)。解析手法は様々で、NMR、FRETや計算機シミュレーションにて立体構造集団と機能の解明が試みられていました。私自身も学会4日目の天然変性蛋白質のカテゴリでポスター発表いたしました。自分の発表は計算機シミュレーションによる内容でしたが、実験の方も発表を聞きに来てくださいました。ポスターの紹介カードも役に立ち、今回のポスター発表で外国人研究者と知り合いになることができました。充実した時間を過ごすことができました。
 最後に学会会場付近の街の雰囲気について述べます。会期中の気温は長袖Yシャツくらいがちょうどいい程度で、夜も寒さは感じられませんでした。学会会場のとなりには公園があり、芝生でくつろいでいる人がいました。所々にカフェやレストランがあり、食事には困りません。少し足をのばせば、中華街やフィッシャーマンズワーフがあり、おいしいシーフードや名物のクラムチャウダーが食べられます。夜もバーやレストランなどでおいしいお酒が飲めます。学会でも、3日目の夜にはレセプション&ダンスが開かれ、ドリンク(2杯まで無料)とバンド演奏が楽しめました。
 本学会に参加することでとても濃密な5日間を過ごすことができ、Biophysical SocietyでのIDPへの注目の高さをうかがい知ることができました。このような機会を与えてくださった早稲田大学 高野光則教授に感謝いたします。

早稲田大学 先進理工 梅澤 公二




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