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生命医科学研究科 村上優貴さんらの論文がRSC Medicinal Chemistry に掲載

2023.01.10
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生命医科学研究科 生命情報科学研究室 博士前期課程1年の村上優貴さんが、造血器型プロスタグランジンD合成酵素 (H-PGDS) に対するタンパク質分解誘導剤 (PROTAC) の構造活性相関研究に成功!

生命医科学研究科 生命情報科学研究室 博士前期課程1年(学部4年時 創薬有機化学研究室)の村上優貴さんらの研究グループは、造血器型プロスタグランジンD合成酵素 (H-PGDS) に対するタンパク質分解誘導剤 (PROTAC) の開発に成功し、研究成果が「RSC Medicinal Chemistry」に掲載され、表紙に採択されました。
論文著者
生命医科学研究科 博士前期課程1年
生命情報科学研究室所属
(学部4年時 創薬有機化学研究室 所属)
村上むらかみ  優貴   ゆうき さん

論文タイトル
「Structure-activity relationship study of PROTACs against hematopoietic prostaglandin D2 synthase」

(和訳:造血器型プロスタグランジンD合成酵素を標的としたPROTACの構造活性相関研究)

掲載雑誌
RSC Medicinal Chemistry

研究内容

—今回の研究内容について村上さんに解説していただきました。

造血器型プロスタグランジン合成酵素 (H-PGDS) はプロスタグランジンD2(PGD2)を産生する酵素であり、PGD2の過剰な産生は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの免疫疾患を引き起こす原因となります。現在のところ、既存のH-PGDS阻害剤は、臨床試験で望むような治療効果が得られていません。そこで今回、細胞内のユビキチンプロテアソームシステムを利用するタンパク質分解誘導剤(PROTAC)に着目しました。
当研究室では最近、H-PGDSに対するPROTAC開発に成功しておりましたが、PROTACは標的タンパク質リガンドとユビキチンリガーゼ(E3リガーゼ)リガンドを連結させたキメラ分子であり、構造が複雑であるため、更なる構造展開を行う余地がありました。そこで本研究では、H-PGDSリガンドの変更、及びリガンド同士の結合様式を変えた新たなPROTAC開発に成功しました。開発したPROTACのH-PGDSの分解挙動と分子動力学シミュレーションから、H-PGDS/PROTAC/E3リガーゼの三者複合体の安定性がH-PGDS分解活性の強さに寄与することが示唆されました。
本研究で見出された成果が、ニューモダリティとして期待されるPROTACの合理的デザインに活用されることを期待します。
造血器型プロスタグランジンD合成酵素を分解するPROTAC

村上 優貴さんのコメント

本研究は、近年注目されている次世代型医薬品であるPROTACに関するもので、これまで当研究室で研究を進めてきたH-PGDSを標的とした研究です。本研究によって示された、三者複合体の安定性が標的タンパク質の分解挙動に影響するという結果は、今後のPROTAC設計において有用な知見であると考えております。また、研究内容が評価され、雑誌のFront Coverに採択して頂けたことを大変光栄に思います。
本研究の発表に際して、出水先生をはじめ、サポート頂いた先生方、出水研究室の学生の皆さんに深く感謝申し上げます。今後も創薬分野の発展に貢献出来るよう研究に邁進して参ります。

指導教員の出水 庸介客員教授のコメント

論文アクセプトおめでとうございます!
本研究は、村上さんが卒業研究としてまとめ上げてくれた成果になります。学部3年後期で研究室に配属された時には、創薬化学に関する知識は全く持っていませんでしたが、たった1年半の間で、化合物のデザインと合成、タンパク質・細胞レベルでの評価、インシリコ評価までを自身の手で成し遂げ、論文として纏め上げてくれました。また、本論文がFront coverに採択されたことも大変嬉しく思います。
修士課程では、新たな知識・技術を習得するために寺山研究室に進学した村上さんですが、非常に精力的に研究を行っていると伺っています。
これらからもオンオフを切り替えながら研究活動に取り組み、さらに成長していく事を期待しています。
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