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生命医科学研究科 構造細胞科学研究室 大久保 達成さんが、日本顕微鏡学会第67回シンポジウムでポスター賞を受賞!

2024.12.24
  • TOPICS
  • 研究
  • 学生の活躍

エボラウイルス様粒子出芽過程における形質膜動態についての研究内容を発表

 生命医科学研究科 博士後期課程1年の大久保 達成さんが、2024年11月2日~ 3日に北海道大学にて開催された日本顕微鏡学会第67回シンポジウムにおいて、「エボラウイルス様粒子出芽過程における形質膜の動的構造解析」について発表し、数多くの演題の中より学生優秀ポスター賞を受賞しました。おめでとうございます。大久保さんの発表についてご紹介します。

受賞者
生命医科学研究科 博士後期課程1年
構造細胞科学研究室所属
大久保   達成おおくぼ  たつなり さん

指導教員
大学院生命医科学研究科
構造細胞科学研究室 三尾和弘 客員教授

受賞内容

日本顕微鏡学会第67回シンポジウム
学生優秀ポスター賞


発表タイトル
「エボラウイルス様粒子出芽過程における形質膜の動的構造解析」

ー今回受賞した研究内容について大久保さんに解説していただきました。

 エボラウイルスはヒトや霊長類に致死率の高い出血熱を引き起こし、そのマトリクスタンパク質VP40は単独でウイルス様粒子(virus-like particle: VLP)を形成します。VLPの出芽抑制は創薬ターゲットとして注目されていますが、未だ不明な点も多いです。本研究では、出芽過程における形質膜の動的構造変化を明らかにするため、走査型電子顕微鏡とクライオ電子顕微鏡による形態観察、および回折X線明滅法(Diffracted X-ray Blinking: DXB)を用いた高速時分割動態計測を実施しました。
形態観察の結果、野生型VP40が発現された細胞表面からは長さ600 nmの突起が確認され、細胞外では長径約1 µmのひも状粒子も観察されました。これらの構造はウイルス様粒子の出芽によって形成された可能性があると考えられました。
DXB法を用いて、細胞表面に結合された金属ナノ結晶から生じるX線回折輝点の動きを解析することで、細胞膜動態を明らかにしました。膜動態をリアルタイムで計測したところ、VP40発現細胞で膜動態の有意な亢進が確認されました。運動亢進はトランスフェクション後12時間で現れはじめ、48時間後には膜動態の速さを示す減衰定数が2.5倍にも増加しました。これらの変化はVP40の発現量と同期しており、VLP生成量と膜動態亢進の関連が示唆されました。
本研究は、VLP出芽時の膜動態をピコメートル精度で解析した初の報告で、新たな薬効評価法や膜動態解析手法の開発に繋がる可能性があると考えています。

本受賞について、大久保さんと指導教員の三尾先生からコメントをもらいました。

受賞者: 大久保 達成 さんのコメント

日本顕微鏡学会シンポジウムにおいて学生優秀ポスター賞をいただけたことを大変光栄に思っております。厳しく、熱心にご指導くださる三尾和弘教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の佐々木裕次教授、長崎大学感染症共同研究拠点の南保明日香教授、古山若呼特任助教、研究室のメンバーにこの場を借りてお礼申し上げます。DXB技術はまだまだ発展中で、研究室に在籍し始めて数年経った今でも解析法や測定法が日々アップデートされています。初めは解析や説明に苦労しましたが、最近になり段々と上手く扱えるようになってきたと感じています。これも日々のディスカッションのおかげだと思います。最後に、いつも支えてくださっている関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

指導教員:三尾 和弘 客員教授のコメント

受賞おめでとうございます。大久保さんはX線1分子動態解析法とクライオ電顕単粒子解析を併用して、タンパク質のダイナミクスを多面的に解析してきました。新しい解析法を自分で編み出すなど、非常に積極的に取り組んできましたが、今回の受賞はそれを裏付ける結果だと思います。審査員の質問に対しても、熱心に分かりやすく説明していた姿勢も評価されたのではないでしょうか。共同研究者の方々からも熱い祝福をもらいました。この受賞をきっかけに、ますます研究の幅を広げていって欲しいと思います。


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